はじめに
あけましておめでとうございます! カイザーです!
今年よろしくお願いします!
さて、GCMが2019年4月に終了となります。1年前から非推奨となり、FCMへの移行が促されていますが、まだ移行できていない方もいるのではないでしょうか?
公式ガイドラインは、GCM3.0からの移行について記載されていますが、GCM2.0からの移行については記載されていません。
GCM2.0の特徴は、BroadcastRecieverを使った実装が行われていることす。もし、このような実装がされている場合、公式ガイドライン通りにはいきません。
今回は、GCM2.0から飛び級でFCMに移行する方法を説明します!
FCM移行で大事なポイント
FCM移行で大事なポイントは下記になります。
- FCM移行するときは、必ずGCMのGCPプロジェクトを引き継ぐ形で、プロジェクトを新規作成する。
- 既存のFirebaseプロジェクトに引き継ぐことはできない。
- サーバサイド、Androidアプリサイドの移行は別々でも良い
まず1つ目。これを行わないと、GCMトークンとFCMトークンの互換性が失われます。引き継がずにプロジェクトを新規作成してしまうと、新しいアプリにはプッシュ通知が届かなくなってしまいます。
また、この状態でサーバに登録しているAPIキーを差し替えてしまうと、古いアプリにプッシュ通知が届かなくなってしまいます。
2つ目は、既存のFirebaseプロジェクトにもサーバーキーが割り当てられている理由により、不可能です。
そのため、新しくFirebaseプロジェクトを、GCPから引き継ぐ形で作成する必要があります。
ただし、既存のFirebaseプロジェクトと共存させることも可能です。この点についても説明して行きます。
3つ目ですが、GCMとFCMは互換性があるため、別々に対応できるということです。つまり、ダウンタイムなしに移行できます。
なお、AWS SNS側のFCM移行は対応しており、AWS SNSでGCM向けのメッセージをPublishすると、FCMのエンドポイントに送信されます。
これらを踏まえて、プロジェクトの引き継ぎから実装の修正までを説明します。
Firebaseプロジェクトへの引き継ぎ
FCM対応するには、まずFirebaseプロジェクトが必要になります。GCP上でGCMが設定されているGoogleアカウントにログインした状態で、Firebaseコンソールにアクセスします。
「プロジェクトの新規作成」を選択し、「プロジェクト名」右側の「▼」をクリックすると、引き継ぎ元GCPプロジェクトを選択できるので、引き継ぎたいGCMが設定されている物を選択します。
Firebaseの初期設定
新規作成の場合と同様、Firebaseの初期設定が必要になります。新しくAndroidアプリを追加しましょう。
Firebaseを初めて使用するプロジェクトの場合は、Android StudioのFirebase Assistantを使用してセットアップします。
既にFirebaseを組み込み済みのアプリの場合は、Firebaseのプロジェクトページからアプリを追加することになりますが、途中でダウンロードできるgoogle-services.jsonが使えませんので、最終ステップの疎通確認はスキップします。
依存ライブラリの変更
アプリレベルのbuild.gradleのうち、dependenciesを下記のように変更します。
“com.google.android.gms:play-services-gcm”を使用している場合
代わりに、”com.google.firebase:firebase-messaging”を使用しましょう。
“com.google.android.gms:play-services”を使用している場合
ライブラリのバージョンアップした上で、必要なサービスのみ追加することをオススメします。
その場合は、GCMの代わりに”com.google.firebase:firebase-messaging”を指定するのみになります。
非推奨ですが、どうしてもバージョンアップできない場合は、古いFirebaseライブラリを使用することで一時的に対応可能な場合もあります。
その場合は、”com.google.firebase:firebase-messaging”を追加の上、バージョンは使用しているPlay Servicesのバージョンと合わせてください。
また、”com.google.firebase:firebase-core”もバージョン違いでエラーとなる場合は、そちらもバージョンを合わせてください。
実装の変更
既存のFirebaseとの共存
既存のFirebaseと共存させる場合は、FCM用Firebaseの初期化処理を実装します。
1 2 3 4 5 | val options = FirebaseOptions.Builder() .setApplicationId("アプリID") .setApiKey("ウェブ APIキー") .build() FirebaseApp.initializeApp(this, options, "FCM") |
アプリID、ウェブ APIキーは、それぞれFirebaseプロジェクトの設定から取得してください。
メッセージ受信用BroadcastRecieverの廃止
GCM2.0では、下記のようなBroadcastReceiverを自前で定義していました。
1 2 3 4 5 6 7 | public class GcmBroadcastReceiver extends WakefulBroadcastReceiver { @Override public void onReceive(Context context, Intent intent) { .... } } |
FCMではBroadcastReceiverは自前で定義する必要がありませんので、削除します。
AndroidManifest.xml上では、下記を削除します。
1 2 3 4 5 6 7 8 | <receiver android:name=".GcmBroadcastReceiver" android:permission="com.google.android.c2dm.permission.SEND" > <intent-filter> <action android:name="com.google.android.c2dm.intent.RECEIVE" /> <category android:name="<アプリのパッケージ名>" /> </intent-filter> </receiver> |
代わりに「FirebaseMessagingService」を継承したクラスを作成し、これまでのGcmBroadcastReceiver#onReceive()に実装した内容を移植します。
ついでに、Kotlinにしました。
1 2 3 4 5 6 7 | class MyFcmListenerService: FirebaseMessagingService() { override fun onMessageReceived(message: RemoteMessage?) { // message.dataが、GCM2.0時代のintentのextraに相当する。 val data = message?.data ... } } |
AndroidManifestは下記を追記します。
1 2 3 4 5 6 | <service android:name=".MyFcmListenerService"> <intent-filter> <action android:name="com.google.firebase.MESSAGING_EVENT" /> </intent-filter> </service> |
なお、GCM2.0の実装では、下記考慮によりBroadcastRecieverからサービス起動を行なっていたと思いますが、そちらもそれぞれ修正する必要があります。
Android 6以降のDozeモード対応
Dozeモード対応のため、ServiceをWakefulStartしていた箇所は、WakefulStartなしにそのままサービスを起動することができます。
FirebaseMessagingService自体が、受信メッセージの優先度が高い場合のみ、自動的にDozeモードを抜けるようになっているためです。
AWS SNSでFCMに優先度の高いメッセージを配信するには、下記のように「priority」キーを追加し、「high」を設定します。
1 2 3 4 | { "default": "メッセージ", "GCM": "{ \"data\": { \"message\": \"メッセージ\" }, \"priority\": \"high\" }" } |
Android 8でのバックグラウンド制限対応
GCM時代から引き続き対応が必要になります。これは基本的には既存対応で良いですが、GCM 2.0の実装の場合、IntentServiceをforegroundStartしていることもあると思います。
しかし、FirebaseMessagingServiceではIntentが引数で渡らなくなったため、これを機に「JobScheduler」に移行することをオススメします。
ただし、API Level 21以上から使用可能であるため、20以下をサポートするには「FirebaseJobDispatcher」を使用することをオススメします。
Registration ID受信用のBroadcastReceieverの廃止
こちらも同じように実装を差し替えます。
既存のRegistration ID受信用レシーバを削除します。AndroidManifest.xmlでは下記を削除します。
1 2 3 4 5 6 7 8 | <receiver android:name=".GcmRegistrationIdBroadcastReceiver" android:permission="com.google.android.c2dm.permission.SEND" > <intent-filter> <action android:name="com.google.android.c2dm.intent.REGISTRATION" /> <category android:name="<アプリのパッケージ名>" /> </intent-filter> </receiver> |
実装は、FCMのライブラリのバージョンが、17.1.0以上かどうかで変わります。
FCMのバージョンが17.1.0以上の場合
先ほど作成した「MyFcmListenerService」クラスに、下記を追加します。
1 2 3 | override fun onNewToken(token: String?) { // 新しいトークンが発行された時の処理 } |
FCMのバージョンが17.0.0以下の場合
最新バージョンを使用することがベストですが、止むを得ず旧バージョンを使用する場合は、非推奨ですが下記のように実装します。
まず、FirebaseInstanceIdServiceを継承したサービスクラスを作成します。
1 2 3 4 5 6 | class MyInstanceIDListenerService: FirebaseInstanceIdService() { override fun onTokenRefresh() { // 新しいトークンが発行された時の処理 } } |
次に、AndroidManifestでサービス登録します。
1 2 3 4 5 6 | <service android:name=".MyInstanceIDListenerService"> <intent-filter> <action android:name="com.google.firebase.INSTANCE_ID_EVENT" /> </intent-filter> </service> |
トークン取得処理の変更
FCMからトークンを取得するように実装変更します。
FCMのバージョンが17.1.0以上の場合
非同期で取得します。
1 2 3 | FirebaseInstanceId.getInstance().instanceId.addOnSuccessListener { token -> // トークン取得成功 } |
複数のFirebaseプロジェクトを共存させている場合は、下記のようにします。
1 2 3 | FirebaseInstanceId.getInstance(FirebaseApp.getInstance("FCM")).instanceId.addOnSuccessListener { token -> // トークン取得成功 } |
FCMのバージョンが17.0.0以下の場合
同期で取得します。
1 | val token = FirebaseInstanceId.getInstance().token |
複数のFirebaseプロジェクトを共存させている場合は、下記のようにします。
1 | val token = FirebaseInstanceId.getInstance(FirebaseApp.getInstance("FCM")).token |
AWS SNS側の対応
GCPプロジェクトの引き継ぎを行ったので、実は対応すべき設定はありません。AWS SNSは既にFCMのエンドポイントに接続しているためです。
引き続き以前のサーバーキーを使用することができますが、新しいサーバーキーに移行することが推奨されているため、必要に応じてこちらも移行しておきましょう。
新しいサーバーキーは、Firebaseの設定画面の「クラウドメッセージング」から取得できます。
さいごに
今後、モバイルアプリ向けのGoogleサービスが、さらにFirebaseに移行されることが考えられます。
既に、モバイルアプリ向けGoogleアナリティクスSDKは、Firebase向けGoogleアナリティクスSDKに移行する必要があります。
Android開発者としては、今後のFirebase移行の動向をキャッチアップして行きたいと思います。