はじめに
最近、仮想通貨(暗号資産)の取引を始めてみたので、それにあたって確定申告に向けて仮想通貨の損益計算・税金計算ツールを利用してみようと思いました。
そこで今回は、いくつかある仮想通貨の税金計算ツールのどれを使うのがもっとも適しているか、その特徴やサービス内容を比較してみます。
仮想通貨の税金計算ツールとは
まず最初に、仮想通貨の税金計算ツールとは何か説明します。
仮想通貨の税金計算ツールは、損益計算ツールや収支計算ツールといった呼び方もされますが、簡単にいうと取引所の取引履歴やウォレットのトランザクションから仮想通貨の損益を計算してくれる支援ツールのことです。
仮想通貨取引は法定通貨を使った売買取引程度であれば自分で管理して計算することも難しくはありません。
ですが、仮想通貨同士の交換やステーキングなどといった仮想通貨特有の取引では、取引形態によって計算方法が異なるため損益計算が煩雑になりがちで、自分で管理して正確に計算することは困難です。
さらに、分散型取引所(DEX)を利用した取引ではトランザクションを見て取引履歴を確認しなければならず、計算の前の取引履歴の準備段階から大変です。
これら損益計算やトランザクションからの取引履歴の取得などが簡単にできるようさまざまな機能を備えたツールが仮想通貨の税金計算ツールになります。
比べてみるツール
比べてみるツールについて紹介します。
以下に比較するツールとそれぞれのツールの特徴、機能をまとめました。
どのツールも2016年末から2018年頭あたりに開発されたようですね。ちょうど私も2017年くらいから、Bitcoinを認知し始めました。
ツール | 特徴 | 機能一覧 |
クリプトリンク 2017年創業 | 月300円台から使える 計算代行など税務関連の他サービスも充実 | 損益計算 ポートフォリオ 損益シミュレータ 未上場投資一覧 仕訳作成 |
クリプタクト 2018年創業 | ディファイタクト、フィンタクトなど特定のユーザー向けサービスも充実 | 損益計算 ポートフォリオ |
Gtax 2016年創業 | 利用料金の早割キャンペーンなどがある | 損益計算 ポートフォリオ 仕訳作成 |
Koinly 2018年創業 | 海外製で海外取引所に強い 対応取引所・チェーンが多い | 損益計算 ダッシュボード(ポートフォリオ) |
これら四つのツールについて機能を確認し、比較していきます。
比較ポイント
比較するにあたって、比較するポイントを明確にしておきます。
1.使い勝手
UIや計算速度といった快適性、操作感などを評価する。
特に明細を修正したい、特定の明細を確認したい、といった場面が計算ではよく起きるので、そのあたりのデザインを重視したい。
2.料金・料金プラン
料金に応じてできることがどれだけあるかのコストパフォーマンスを評価する。
もちろん、ケースによって必要となるプランはさまざまだが、私のような個人で仮想通貨取引をしているケースで考える。
3.対応取引所・チェーン数
取引履歴を自動で取得できる取引所およびブロックチェーンがどれだけあるか。
単純に多い方がよいが、2の料金プランで使える取引所とチェーンを切り分けているツールも多いので、メジャーな取引所・チェーンがどれだけ安い料金プランから使えるかも評価したい。
4.付随機能
損益計算に関する機能に限らず、他に仮想通貨の取引や管理を支援する機能が付随しているか。
その付随機能にどの程度有用性があるか。
5.その他のサービス
税金計算ツール以外に提供している仮想通貨に関するサービスがあれば比較する。
以上の五点を比較ポイントとして五段階(☆☆☆☆☆)でそれぞれのツールを評価していきます。
比べてみた
クリプトリンク
個人的にコストパフォーマンスを重視したいので、
まずは値段の安さを押している「クリプトリンク」から確認していきます。
総評
1.使い勝手 | ☆☆☆☆ |
2.料金・料金プラン | ☆☆☆☆☆ |
3.対応取引所・チェーン数 | ☆☆☆ |
4.付随機能 | ☆☆☆☆☆ |
5.その他のサービス | ☆☆☆☆☆ |
1.使い勝手
使い勝手は良好です。
取引履歴の計算速度、また、明細の多いウォレットを登録した時の速度も悪くありません。
現物取引、証拠金、NFTを別々のタブで確認でき、ウォレット登録は一旦別タブで明細を確認して必要な取引のみ登録できる形になっているので、目的の明細を探しやすく修正がしやすいデザインになっています。
フィルターをかけて指定した期間、通貨別、取引所別など細かく抽出できるのもありがたいです。
2.料金・料金プラン
料金・料金プランに関しては他と比較してもコスパ最高です。
個人向けのツールは、広告で宣伝している「月300円台から」使えるとの文言通り、なんと年間3,960円から利用できます。
内容としても、国内取引所はもちろん、海外取引所の取引履歴の取り込みも対応しています。
クリプタクトやGtaxでは、15,000円以上の料金プランでなければ海外取引所はメジャーどころでも対応していないので、私のように海外取引所も利用している人にとってはコスパの面で最高です。
また、DeFiを利用している場合でも、ウォレットから取引履歴を登録する機能が9,960円から使えますので、こちらも他ツールと比べてかなりコストを抑えられます。
登録できる明細の件数も他ツールと比べて遜色ないので、コスパならクリプトリンクといえるでしょう。
クリプトリンクでは個人だけでなく法人向けのプランも提供しており、この法人向けプランは年間19,800円から利用できて、国内・海外取引所はもちろんDeFiにも対応しています。
他の国内ツールでは個人向けのプランでもこのお値段でDeFiまで対応しているところはなく、法人としての利用でもコスパ最高です。
3.対応取引所・チェーン数
対応取引所・チェーン数は、公表されている数だけで見れば他ツールと比べてやや少ないです。
ですが、国内取引所、海外取引所ともにメジャーどころから中堅クラスは押さえられていますし、チェーンもよほど上級者でなければ扱わないようなマイナーチェーンでなければ問題なく取り込めます。
なにより、2の料金・料金プランでも書いた通り、これらの海外取引所、チェーンが他ツールと比べて格安なプランで取り扱えるのでポイントとしては高評価です。
4.付随機能
クリプトリンクでは税金計算ツールに付随している機能として、「ポートフォリオ」、「損益シミュレータ」、「未上場投資一覧」「仕訳作成」があります。
ポートフォリオは他のツールでもありますが、現状の評価額とどの仮想通貨をどの程度の額保有しているかをグラフで表したものです。
損益シミュレータは何円で売却予定か入力すると、登録されている取引履歴を元にいくらの損益が発生するかシミュレーションできる機能です。
未上場投資一覧はICOなどで上場前の仮想通貨を購入した際にいくらでどれだけ購入したか登録しておくことができ、その通貨が上場した際に明細を反映させることができます。
仕訳作成は対応している会計ソフトに取り込める形式の仕訳ファイルを自動作成できるので、確定申告に大変便利な機能です。
特に、ICOで投資した仮想通貨はかなり長期間上場を待つこともあるので、未上場投資一覧で忘れずに管理できるのは嬉しい機能です。
5.その他のサービス
クリプトリンクでは税金計算ツール以外にも、「計算代行サービス」「クリプトリンクトラッシュ」「節税サービス」といったサービスが充実しています。
計算代行サービスは損益計算をプロに丸投げできるサービスで、計算をする手間も、計算ミスの心配もなくなるので取引数が多い方や多忙な方におすすめできます。
また、クリプトリンクトラッシュは上場しなかった仮想通貨や、流動性が低すぎて売れない仮想通貨を処分して損失を確定できるクリプトリンク独自のサービスで、さまざまなICOに投資したり、ミームコインなどマイナーな仮想通貨を取引したりしている方はこのサービスのためにクリプトリンクを利用してもいいかもしれません。
節税サービスは、多額の利益が出ている場合に仮想通貨の専門家と税理士が共同で効果的な節税サポート、税務申告まで対応してくれるサービスです。
クリプトリンクでしか提供していない独自のサービスまであり、他と比べても仮想通貨に関するサービスは充実しているといえるでしょう。
クリプタクト
次に、クリプタクトを見ていきます。
総評
1.使い勝手 | ☆☆☆☆ |
2.料金・料金プラン | ☆☆☆ |
3.対応取引所・チェーン数 | ☆☆☆☆☆ |
4.付随機能 | ☆☆☆ |
5.その他のサービス | ☆☆☆☆ |
1.使い勝手
使い勝手は良好です。
速度は十分ですし、明細一覧が見やすいので目視で精査していても目が滑りません。
直感的にわかりやすい配色、ところどころに仮想通貨や取引所のロゴがある、整数部分を強調表示している点など、見やすいデザインとなっています。
集計された損益だけでなく、サマリーとしてタブ切替一つで年別、通貨別、取引所別での損益を確認できるのもポイントです。
2.料金・料金プラン
率直に言うと、お高いです。
料金プラン全体として、他の国内ツールと比べても頭一つ抜けて高い印象です。
有料プランは年間8,800円のお試しプランからになりますが、この時点では海外取引所やDeFiに対応していないので、これらを利用している場合はより上位のプランを利用することになります。
海外取引所を扱えるのは年間19,800円のライトプラン、DeFiに対応しているのは年間55,000円のアドバンスプランからになるので、私のようにどちらも利用しているけれどそこまで利益が大きくないケースではちょっと二の足を踏むお値段に感じます。
また、この料金設定で他の国内ツールにはある「仕訳作成」機能がないことが気になりました。
この仕訳作成機能は、確定申告で会計ツールの利用を考えたときに非常に助かる機能なので、付随機能の中でもかなり欲しい機能なのですが、高めの料金設定で他の国内ツールにはあるこの機能がないのはやや割高感が否めません。
3.対応取引所・チェーン数
国内ツールでは最多の対応数です。
大手、中堅どころの取引所から、海外をメインに取引している上級者でもなければなかなか使わないような海外取引所まで網羅しています。
チェーンも普段DeFiを利用していて扱うようなメジャーなチェーンからあまり目にすることがないようなチェーンまで登録できます。
2.料金・料金プランでは海外取引所やDeFiに対応する場合の料金の高さに言及しましたが、とはいえ、ここまで対応しているので高評価としておきます。
4.付随機能
クリプタクトでは税金計算ツールに付随している機能として「ポートフォリオ」があります。
付随機能としてはポートフォリオだけですが、このポートフォリオが充実しています。
資産評価額、資産取得額、取引所別取引高、取引所別支払手数料がそれぞれドーナツグラフで表示され、各通貨の時価を反映した含み損益の情報までグラフで表してくれます。
それ以外にも実現損益やポジションとその時価情報までわかりやすくグラフで表示してくれます。
5.その他のサービス
クリプタクトではその他のサービスとして「ディファイタクト」と「フィンタクト」を提供しています。
ディファイタクトは管理のしづらいDeFiでの取引を、売買だけでなくステーキングや流動性供給まで一覧化して管理できるサービスで、DeFiで複雑な取引をされている方向けのサービスです。
フィンタクトはアナリストによる企業分析、ヘッジファンド出身者によるマーケットレビュー、企業IRからの情報などの情報を元に投資アイデアのシミュレーションや交換ができるということで、税務ではありませんが投資家向けのサービスも提供しています。
Gtax
国内のツールとして最後にGtaxを評価します。
総評
1.使い勝手 | ☆☆☆☆ |
2.料金・料金プラン | ☆☆☆ |
3.対応取引所・チェーン数 | ☆☆☆ |
4.付随機能 | ☆☆☆ |
5.その他のサービス | ー |
1.使い勝手
良好です。
通貨の不足があるなど整合の取れない明細は他ツールでも抽出はされますが、Gtaxでは自動的に要処理一覧タブに移動され、いくつかの処理方法のボタンから選んでクリックするだけで簡単に登録できるのが非常に使いやすいです。
速度も問題なく、明細一覧などは全体的にクリプタクトと似たデザインという印象で見やすいです。
2.料金・料金プラン
クリプトリンクとクリプタクトの間のような料金設定です。
ですが、もっとも安価なプランである5,500円のミニマムプランでは、国内取引所の中でも一部の取引所のみの対応となり、さらに上位の16,500円のライトプランでなければ他のツールと同じように多くの国内取引所を扱うことができません。
ライトプランでは海外取引所も扱えますが、DeFiも扱うとなるとその上の33,000円のベーシックプランが必要になってきます。
その点を考慮するとやや高価な印象を持たざるを得ません。
3.対応取引所・チェーン数
すべての数で見た場合、Gtaxはクリプトリンクとクリプタクトの間の対応数になります。
国内取引所の大手、中堅どころから海外取引所のややマイナーな取引所までカバーできています。
ただ、チェーンの方はメジャーどころはカバーできていますが、他ツールよりやや少ないのでこのあたりは料金プランのことも考えて今一歩といったところでしょうか。
4.付随機能
Gtaxでは「ポートフォリオ」と「仕訳作成」が付随機能として利用できます。
移動平均、総平均がボタン一つで切り替えられて損益・残高がサマリーとして確認できるところは他にない機能です。
また、保有資産の評価損益などが表示された表と実現損益・含み損益のグラフ、残高情報のグラフが一画面で確認できるのは、視覚的にわかりやすい上にデータも確認しやすいのでUIとして優秀だと感じました。
仕訳作成機能は、クリプトリンクと同じように対応している会計ソフトに取り込める形式の仕訳ファイルを自動作成でき、確定申告に活用できます。
5.その他のサービス
公式サイトを見る限りでは、特に他にサービスはなさそうなので評価なしとします。
Koinly
Koinlyは海外のツールで、海外取引所に強いのが特徴です。
総評
1.使い勝手 | ☆☆☆ |
2.料金・料金プラン | ☆☆☆ |
3.対応取引所・チェーン数 | ☆☆ |
4.付随機能 | ☆☆☆ |
5.その他のサービス | ー |
1.使い勝手
まずまずです。
明細の表示は見やすいは見やすいのですが、国内のツールの明細の表示に慣れていると少し戸惑いますし、日付など明細としてはそこまで重要でない情報が大きく表示されているため明細の量が多くなるとかなりページが長くなりそうです。
また、計算速度は十分なのですが、さまざまな機能を盛り込んでいるからか各ページの読み込み、数値の反映に数秒程度時間がかかることがあるので少し使い心地の悪さを感じます。
2.料金・料金プラン
国内のツールと比較するのは難しいですが、間を取って中間くらいの評価です。
比較するのが難しい理由は、有料プランであれば対応している取引所やチェーンは制限なく取り込め、プランを上位にするとより多くのトランザクションが登録できるようになるという国内のツールとは違った料金体系だからです。
また、米ドル払いなので為替レートによって金額が左右されるので、単純に比較できません。
本記事を執筆している現在のレート159円で計算したところ、最安であるNewbieプランの49ドル(7,791円)で100トランザクション、最上位であるProプランでは299ドル(47,541円)で10000トランザクションとなっていました。
トランザクション数だけで見ると国内ツールと比べて高いですが、一方で取引所とチェーンのプランごとの制約がないことを考えると、一長一短といったところで中間評価としています。
3.対応取引所・チェーン数
あくまで日本人が使う観点で考え、低めの評価とします。
誤解のないよう書いておくと、対応している取引所数とチェーン数は圧倒的に多いです。
メジャーどころから国内ツールではどこも対応していないマイナーな海外取引所、チェーンまで網羅しており、目的の取引所を探すのに手間取るほどです。
ですが、日本人が使う場合、やはり日本国内の取引所に対応していて欲しいものですが、Koinlyでは国内取引所はCoincheckとbitFlyerにしか対応していません。
海外取引所をメインに利用している方にはよいかもしれませんが、日本から利用するなら他の国内のツールでよいのではないかな、と思ってしまいます。
4.付随機能
Koinlyでは付随機能として「ダッシュボード」でポートフォリオを確認できます。
ダッシュボード自体は他のツールにもありますが、Koinlyのダッシュボードは非常に機能が充実しています。
まず、取得に利用した総額、現在の含み損益、時価総額が表と日別のグラフで表されているので現在の資産状況と推移が管理しやすいです。
さらに、日別のトランザクション数もグラフ化され、また、トランザクションの取引種別ごとにどれだけの金額が取引されたかまで表示されているので、他にはないさまざまな情報を確認することができます。
タブ切替で保有しているNFTが一覧化されて表示されるのも高評価ポイントです。
5.その他のサービス
公式サイトを見る限りでは、特に他にサービスはなさそうなので評価なしとします。
まとめ
ここまで四つのツールをそれぞれ五点の比較ポイントを元に評価してきました。
もちろん、個人利用か法人利用か、各人の資産状況、利用している取引所、取引量によって最適なツールは変わってきます。
今回は私のような国内取引所だけでなく海外取引所、DeFiも利用している個人というケースで考えると「クリプトリンク」を選びます。
メジャー、中堅どころの国内、海外取引所は押さえられているのでよほどマイナーな海外取引所を利用していない限りは問題ないですし、DeFiを利用していても十分な種類のチェーンが取り込めます。
その上で、他ツールと比べてかなり低コストで計算ができるというコスパのよさがポイントです。
また、クリプトリンクのツールを利用していて、複雑な取引に手を出したり取引量が多くなったりしたら同社のサービスである計算代行に丸投げしてしまえばいいですからね。
とはいえ、これはあくまで私のようなケースの場合です。
取引明細を取り込めなければ元も子もありませんから、たとえば、マイナーな取引所まで利用している方ならクリプタクトが最適になりますし、中でも特にマイナーな海外取引所やチェーンも利用しているとなるとKoinlyでしか計算できない場合もあると思います。
今回の評価は参考までに、自身の資産状況や取引量、利用している取引所、チェーンをよく見直し、利用しようとしているツールで取り込めるか確認した上で、コスパなどを考えて選ぶことが重要です。
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