はじめに
そろそろ年末になり、来年の確定申告も近づいてきました。
今回は、暗号資産を個人が購入・売却した際の損益の計算方法と仕訳の記入方法について学習したので、まとめてみたいと思います。
なお、今回の記事では簡易的な計算の為、手数料を省いています。
手数料に関しては、次回の記事にて解説します。
損益計算
通常、損益計算は【売却価額】-【取得価額】になります。
こちら、内容を分解すると以下のような式になります。
【売却総価額】-【取得単価】×【数量】
暗号資産の場合でもこの考え方は同じですが、暗号資産は時価の変動が激しく、基本的に購入も複数回に分けておこなっていることから取得単価の計算が必要になります。
そして取得単価の計算方法は2通りあり、それが「総平均法」と「移動平均法」になります。
移動平均法と総平均法
仮想通貨の損益を計算する手法には「総平均法」と「移動平均法」の2つの種類があります。
「総平均法」と「移動平均法」のどちらの手法を選択するかで損益が変わる場合があります。
簡単に両者の計算方法の違いを説明しますと、
総平均法は、1年間の取引全てを集めて平均取得単価を計算する方法になり
移動平均法は、取得が発生する度、平均取得単価を計算し直す方法になります。
移動平均法と総平均法の損益計算
計算のサンプルとして以下のように暗号資産を購入した際に、「総平均法」と「移動平均法」でどのように損益計算を行なっていくか説明したいと思います。
確定申告の計算期間を1月1日〜12月31日の場合で計算していきます。(個人の場合は1月1日〜12月31日固定になります)
1月1日: 500,000円で1BTCを購入
3月10日: 600,000円で1BTCを購入
5月20日: 700,000円で1BTCを売却
9月25日: 750,000円で3BTCを購入
12月30日: 1,600,000円で2BTCを売却
総平均法の損益計算
総平均の場合、まずは1年間の取引全てを集めて平均取得価額を計算します。
その後に、全ての取引を平均取得単価を用いて、損益の計算を行います。
- 1年間の購入取引から平均取得単価を算出します
- 平均取得単価 = (500,000円 × 1BTC + 600,000円 × 1BTC + 750,000円 × 3BTC) ÷ 5BTC
- = 650,000円/BTC
- 平均取得単価を用いて損益計算を行います
- 5月20日: 700,000円で1BTCを売却
- 平均取得単価 = 650,000円/BTC
- 損益 = (700,000円 – 650,000円) × 1BTC
- = 50,000円
- 12月30日: 1.600,000円で2BTCを売却:
- 平均取得単価 = 650,000円/BTC
- 損益 = (800,000円 – 650,000円) × 2BTC
- = 300,000円
- 5月20日: 700,000円で1BTCを売却
- 合計の損益 = 350,000円
移動平均法の損益計算
移動平均法の場合は、購入が行われる度に平均取得価額を計算し直します。
売却時の損益計算は、その取引時点での平均取得価格を用いて計算します。
- 1月1日: 500,000円で1BTCを購入
- 平均取得単価 = (1BTC × 500,000円) ÷ 1BTC
- = 500,000円/BTC
- 3月10日: 600,000円で1BTCを購入
- 平均取得単価 = (1BTC × 500,000円 + 1BTC × 600,000円) ÷ 2BTC
- = 550,000円/BTC
- 5月20日: 700,000円で1BTCを売却
- 平均取得単価 = 550,000円/BTC
- 損益 = (700,000円 – 550,000円) × 1BTC
- = 150,000円
- 9月25日: 750,000円で3BTCを購入
- 平均取得単価 = (1BTC × 550,000円 + 3BTC × 750,000円) ÷ 4BTC
- = 700,000円/BTC
- 12月30日: 1,600,000円で2BTCを売却
- 平均取得単価 = 700,000円/BTC
- 損益 = (800,000円 – 700,000円) × 2BTC
- = 200,000円
- 合計の損益 = 350,000円
総平均法と移動平均法どちらが良いか
どちらの方法が良いかは、個々の状況によって異なります。
総平均法は手間が少なく、一度計算すれば簡単に損益を算出できますが、市場の変動に対して反応が鈍いという特徴があります。
一方、移動平均法は正確な損益を算出できますが、平均取得価格を都度計算する必要があるため手間がかかります。
したがって、取引頻度や市場の変動によって適切な方法を選択する必要があります。取引が頻繁でなく、市場の変動が少ない場合は総平均法がお得かもしれません。
一方、取引が頻繁であり、市場の変動が大きい場合は移動平均法がより正確な損益を算出できるでしょう。
総平均法と移動平均法の選択方法
仮想通貨を購入した際に、総平均法か移動平均法のどちらの方法を選ぶかについて、期限日までに届け出る必要があります。
提出期限は、その仮想通貨が含まれる年分の確定申告期限までです。
つまり2023年内にビットコインで益が発生している場合は、2024年の3月15日までに届出を指す必要があります。
なお、届出をしなかった場合は総平均法を選択したとみなされます。
また、一度選んだ評価方法は原則として3年間変更することができない点に注意しましょう。
評価方法を変更したい場合は、「所得税の(有価証券・暗号資産)の評価方法の変更承認申請書」を提出します。
暗号資産の仕訳(購入・売却)
暗号資産の購入売却時の仕訳の書き方をケース別に説明します。
今回の仕訳では、取引所を使用して売買をおこなったものとして、現金を使用した取引の勘定科目は
暗号資産取引業者等への一時的な預け金として勘定しています。
暗号資産を現金で購入する
たとえば、現金(日本円)で100万円分のビットコインやイーサリアムなどの何かしらの暗号資産を売買目的で購入した場合には、どのような仕訳になるのでしょうか。
(借方)暗号資産 100万円 /(貸方)預け金 100万円
資産である現金を減らして、代わりに資産として暗号資産が増えるという仕訳になります。
暗号資産対暗号資産の取引
ビットコイン100万円分を、80万円で取得したイーサリアムで購入した場合には、次のように仕訳処理することになります。
(借方)暗号資産 100万円 /(貸方)暗号資産売却 80万円
(借方) /(貸方)暗号資産売却損益 20万円
処理上、暗号資産を売却し、その金額で暗号資産を購入することになるので暗号資産の損益が発生します。
暗号資産を売却した場合(損益なし)
買った時と同額で売れた場合は、非常にシンプルな仕訳となります。
先ほど例として説明した100万円で暗号資産を売って、現金で100万円手にした場合は、次のように仕訳処理することになります。
(借方)預け金 100万円 /(貸方)暗号資産 100万円
買ったときと反対の処理をすれば良いだけです。
しかし、現実の売買では、買った時と同額で売れることはあまり無いと思いますので、利益が出た場合や損失が出た場合も説明してきます。
暗号資産を売却した場合(利益が発生した場合)
例えば、100万円で買った暗号資産が120万円で売れた場合を考えてみましょう。その場合は、次のように仕訳処理することになります。
(借方)預け金 120万円 /(貸方)暗号資産 100万円
(借方) /(貸方)暗号資産売却損益 20万円
100万円で買った暗号資産を売って、手元に120万円の現金が入ってきたということを意味します。
暗号資産を売却した場合(損失が発生した場合)
暗号資産を売って損失が出た場合の仕訳処理も説明しておきます。
100万円で買った仮想通貨が、80万円で売れた場合です。
(借方)預け金 80万円 /(貸方)暗号資産 100万円
(借方)暗号資産売却損益 20万円
NFTの仕訳(購入・売却)
NFTの購入売却時の仕訳の書き方を説明します。
NFTは暗号資産扱いではなく、無形固定資産として扱うため、勘定科目を「無形固定資産NFT」としています。
NFTを暗号資産で購入した場合
例えば100万円で購入したイーサリアムで、120万円のNFTを購入した場合、次のように仕訳処理することになります。
(借方)無形固定資産NFT 120万円 /(貸方)暗号資産 100万円
(借方) /(貸方)暗号資産売却損益 20万円
NFTを売却し暗号資産を取得した場合
100万円で購入したNFTを売却して、120万円分の暗号資産を取得する場合は次のように仕訳処理することになります。
(借方)暗号資産 120万円 /(貸方)無形固定資産NFT 100万円
(借方) /(貸方)無形固定資産NFT売買損益 20万円
さいごに
簡単にですが暗号資産の損益の計算方法と、仕訳についてまとめました。
暗号資産で利益が発生した場合は確定申告が必要なので、基礎を理解しつつ、実際は暗号資産の損益計算ツールなどを使用して確定申告に備えたいと思います。
確定申告用の計算ツールは、こちらを参考にしてください。