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「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読みました

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はじめに

最近話題になっている書籍「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読みました。
といっても話題になっていることを当初知らず、とある好きな作家がTwitterで熱く推しているのを見かけて、じゃあ読んでみるか、と深く考えずに手を出した一冊でした。
が、予想外に面白く、どんな年齢・職業の方でも興味深く読めると感じましたし、今でもそう思っています。
裏表紙側のコピーも、AIにまつわる俗説をきれいに否定してて目を惹きます(少し煽り気味ですが)。

AI対人間

全4章のうち前半の1〜2章ではAIの現状や可能性と限界について、著者の新井氏が手がける「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト、通称東ロボくんの成果を通じて明らかにしていき、後半の3〜4章ではタイトルにもある「教科書が読めない子どもたち」、つまり人間側の話がメインになります。
AIが苦手とする分野は「応用力・柔軟性・発想力」といった、いわゆる一を知って十を学ぶと表現されるような能力で、そういった能力があれば、AIに仕事を代替される危険は少ないだろうと述べています。

ところがこの「一を知る」、つまり基本的な理解力が備わっていない学生がかなり多いのだそうです。例えば下記の問題は、著者が実際に全国の大学生を対象に実施した「大学生数学基本調査」の問題のひとつです。

問題
偶数と奇数を足すと、答はどうなるでしょうか。次の選択肢のうち正しいものに○を記入し、そうなる理由を説明してください。
(a)必ず偶数になる。
(b)必ず奇数になる。
(c)奇数になることも偶数になることもある。

答は(b)ですが、この問題では正解を選ぶことではなく、その理由が採点対象です。正解例は以下のとおりです。

偶数と奇数は、整数m,nをもちいて、それぞれ2m,2n+1と表すことができる。
そして、この2つの整数の和は
 2m+(2n+1) = 2(m+n)+1
となる。m+nが整数なので、これは奇数である。

いわゆる証明問題ですね。実施対象となった全国の大学生6000人で正答率34%、理系の学部生に限っても正答率は46.4%だったそうです。最も多かったパターンの誤答が、偶数を2n、奇数を2n+1として「2n+(2n+1)=4n+1なので奇数」というもので、これは2+3や10+11のような、連続した偶数と奇数の和が奇数になることしか示せていないので不正解です。
ただ、新井氏や他の採点者(いずれも現役の数学者)が驚いたのは、他のもっと深刻な誤答でした。

例1:
2+1=3、4+5=9のように。
例2:
全部やってみたらそうだった。

例1は例示と証明が区別できておらず、例2はふざけて適当に回答しているだけのような気がしますが、例2の答案用紙の裏には、本当に様々な偶数+奇数の計算がびっしりと書いてあったそうです。
例2の何が深刻かというと、単純な例をひたすら重ねて正解に近付こうとするのは、AIやディープラーニングと同じような解き方だと思います。
単純な計算を膨大に繰り返すのはコンピュータにとっては得意中の得意分野で、人間は逆立ちしても敵いません。
あくまで一例ですが、このように課題に対して気合と根性と力技でアプローチするタイプは、真っ先にAIに駆逐されるのではと想像してしまいます。
(なお文中には例3や例4もあり、これらもなかなか驚くような回答内容です)

読解力が低いと何がまずいのか

上述の「大学生数学基本調査」に加えて、読解力を測定する「RST(リーディングスキルテスト)」も新井氏は実施しており、そちらの問題もいくつか掲載されています。
「この程度の問題でこんな正答率?」と驚くこともあれば、「解説されればすぐ分かるような問題文を自分は理解できなかったのか…」と、自分が普段いかにふわっとした文章の読み方をしているかが分かって愕然としたりします。

1〜2章で書かれているのですが、AIが苦手とするのは「文章の意味を理解する」ことで、それができない、つまり一を知って一を学ぶことができないと、AIに対抗することも覚束ないのではないでしょうか。
そもそも、文章を正確に読めないと、契約書やマニュアルなどを元に仕事ができません。
また、文章の意味を正しく把握・理解できない原因のひとつに、文中のよく分からない箇所を飛ばす読み方をしてしまうというのがあり、これはキーワードを拾い集めて重要度を測定し、単語に重みをつけていくディープラーニングや機械学習の挙動にそっくりです。
疲れもすればミスもする人間が、AIのやり方にわざわざ歩み寄る必要は無いということですね。

さいごに

AI・機械学習・ディープラーニング・シンギュラリティ等、いわゆるバズワードへの雑学的な理解が深まるのと、ついでに自分の読解力を試すこともでき、いい本を買ったなと素直に思える一冊です。
書くより読むことの方が圧倒的に多いのがエンジニアですので、読むという行為について再確認できたのも収穫でした。

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